コーチングの基本
コーチングとは何か¶
コーチングとは¶
コーチングとは、対話を重ねることを通して、クライアントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセスである。
コーチングにおける「目標」と「目的」¶
コーチングの対話は、クライアントの内側に眠っている潜在的な目的意識を顕在化させていくプロセスでもあります。こうした目的意識が詳細に言語化されたとき、それがビジョンとなっていきます。そして、ビジョンに至る具体的なマイルストーンが見えてくると、それが目標となり、エネルギーを集中させる焦点となるのです。同時に、目標が明確化する中で、現在の立ち位置との差が明確になり、その差の中に「乗り越えるべき成長課題」が見つかるのです。
コーチがもつべき3つの視点¶
- Possession -
クライアントが目的達成のために備えるべきもの
- 理想としている状態に近づくために自分に必要なものは何ですか?
- 目標達成のためにはどんな分野の情報が必要ですか?
- 自分がいまもっている知識やスキルで使えそうなものは何ですか?
- Behavior -
行動を起こすこと
- やろうと思っていて実行できていないことは何ですか?
- 目標を達成するために今日からできることは何ですか?
- 次回のセッションまでにどんなことをやりますか?
- Presence -
人としてのあり方、価値観、考え方、ものの捉え方
- あなたが大事にしている価値観は何ですか?
- 環境の変化に合わせて、自分が変化すべきことは何でしょうか?
- その目標を達成することは、あなたにとってどんな意味がありますか?
コーチング・プロセス¶
コーチング・プロセスとは¶
- セットアップ -
進め方に関する合意の形成
- 目的の明確化 -
達成したい目標を具体化する
- このコーチングであなたが達成したい目標は何ですか?
- 何のためにその目標を達成したいのですか?
- 目標を達成することで何を手に入れることができますか?
- 目標の達成度合いを測定する基準は何ですか?
- 現状の明確化 -
現状について分析する
- 目標が達成された状態を100点とすると現状の点数は何点ですか?
- 目標の達成に向けてこれまでに取り組んだこと、現在取り組んでいることは何ですか?
- 取り組んだ結果、これまでにどんな変化や進展がありましたか?
- 現在あなたが取り組んでいることに対して、あなたのステークホルダーはどんな評価をしていますか?
- ギャップの原因分析 -
目標が達成できていない背景や理由について分析する
- 目標と現状の間にギャップが生じている原因は何だと思いますか?
- 目標を達成するためにあなたが変えなくてはいけない習慣は何ですか?
- 目標の達成を妨げているあなた自身の課題は何ですか?
- あなたのステークホルダーが認識している課題は何だと思いますか?
- 行動計画の作成 -
目標に向けて前進するためのアクションプランを練る
- さっそく今日からはじめられる行動、やめられる行動は何ですか?
- その行動をいつ、どこで、誰に対して実行しますか?
- その行動をさらに効果的にするために工夫できることは何ですか?
- 次回のコーチングまでに達成することは何ですか?
- フォローアップ -
行動計画の修正と改善を支援しながらクライアントが目標を達成するまでをサポートする
- 目標達成に向けて、今日のコーチングでは何をテーマとして扱いたいですか?
- 前回立てた行動計画を実行してみてどうでしたか?
- 次のセッションまでにどこまで前進したいですか?
- そのために解決しなくてはならない課題は何ですか?
- その課題を乗り越えるために取るべき行動は何ですか?
「目標の明確化」のポイント¶
多くの人は普段から「自分は何者で、何を欲し、何を実現したいと思って生きているのか?」と考えているわけではないため、突然「何を手に入れたいか?」と考えているわけではないため、突然「何を手に入れたいか?」と質問を投げかけられると、多くの場合次の2つに分類されるような目標を話します。
○憧れの目標(Hope toの目標)
○しなければならない目標(Have toの目標)
一方で、コーチがクライアントに語って欲しい本当の目標は、以下の一つのみです。
○真に達成したい目標(Want toの目標)
本気かどうかを確かめる質問の例¶
- なぜその目標を達成したいと思っているのですか?
- その目標を達成することはあなたの人生にとってどれくらい重要なことでしょうか?
- その目標について普段どれくらいの時間を割いて考えていますか?
- その目標を達成するためにどんな行動を取ってきましたか?
- その目標が達成できなかったとしたらどうしますか?
- その目標を達成したあとの次の目標として何を設定していますか?
- 本当に、本当に、本当にその目標を達成したいと思っていますか?
自己を客観視させるための3種の質問¶
- 何を感じたか?何を感じているか? (自分の感情を客観視させる)
- なぜそう思ったか? (自分の思考プロセスを客観視させる)
- どうしたいと思っているか? (自分の欲求を客観視させる)
コーチングのスキルと実践例¶
代表的な7つのコーチング・スキル¶
- 聞く
- ペーシング
- 質問
- アクノレッジメント
- フィードバック
- 提案
- 要望
「聞く」スキル¶
- 「聞く」ことに集中する
- 相手の話の先読みや、結論の先取りをせず、最後まで聞く
- 相手のノンバーバルな情報を受け取る
- 「聞いている」というサインを送る
- 沈黙を共有する
「ペーシング」のスキル¶
英語の「pacing(歩調合せ)」を語源とするこのスキルの基本的な意味は、信頼感や安心感を醸成させるために相手に波長を合わせる、同調する、といったことです。また、「クライアントの話を否定せず、最後まで聞き、受け止める」という姿勢も含まれます。
「質問」のスキル¶
- チャンクダウン -
受けた答えの内容に関して、さらに細かい質問をすることで情報を掘り下げていくこと
- スライドアウト -
受けた答えから、さらに新しい発想が生まれるのを促すときに使う
「アクノレッジメント」のスキル¶
- 存在承認 -
相手の存在に気づいていることを伝える
- 成長承認 -
成長点を的確に伝える
- 成果承認 -
成果を伝える
「フィードバック」のスキル¶
- クライアント自身が第三者の視点を必要としていること
- 行動変容が可能であること
- 忠告や命令にならないこと
- 適切なタイミングであること
- 伝わっているかどうかを確認すること
- 時制に注意すること
「提案」のスキル¶
- Yes/Noの選択権は受け手にある
- 許可を取ってから提案する
- 提案は1回に1つ
- 提案の内容を明確にしてから提案する
- 正論ではなくストーリーを伝える
「要望」のスキル¶
- ストレートに短く伝える
- 相手に対する期待を込めて伝える
- 必要があれば、何度でも繰り返す
コーチの視点¶
- 事前準備がセッションの成否を決める
- 背景を知ることで真の目的を発見する
- 本当にやりたいと思える目的を描く
- 過去・現在・未来をつなぐ一筋のストーリーの重要性
- セッション中に立ち止まって感想を聞く
- 目標をいつも念頭に置かせる工夫「ラベリング」
- エバリュエーション尺度と定量評価
- 評価基準は自分から、評価自体は第三者から
- 現状認識は「アクノレッジ」から
- 目標達成の障害となる「イラショナルビリーフ」を扱う
- 第三者からのフィードバックで立体的な自己認識をさせる
- 目標設定も結果の解釈も、実施方法にもコミットメントを取る
- クライアントが口にしたキーワードを逃さない
- ギャップの分析は、あえて「他責」から「自責」の順番で
- 逆の方向の質問でコミットメントを確かめる
- 過去の成功体験が役割変化への対応では仇になる
- 描いた行動を実践させるための工夫
- 行動の第一歩を設定するときには細心の注意を
- 目標達成に向けた望ましい行動への、惜しみない承認
- 成功の秘訣を言語化させる
- クライアント自らフィードバックを取りにいく
- セッションを通じて得た成果・変化について立体的に捉える
- コーチングの締めくくりは、目標達成の検証と再現性・応用性の確保
- 相手の言葉やプレゼンスにアンテナを立てる
- スライドアウトで相手が考えていなかったポイントを探る
- 相手が想定しない「力強い」質問で、コーチングの新しい展開を作る
- モデルを探し、自分と比較をさせる
- キーワードには質問を重ねて、クライアントの思考を明確にする
- 望ましくない習慣を無意識に続けていることに気づかせる
- 唐突な印象を与える言葉には、その言葉にまつわる過去の思い入れがある
- コーチングのゴールは、「ハードルは高いが、実現可能なレベル」が望ましい
- エバリュエーションプランは、コーチングの地図である
- ゴール後の成果をイメージする質問を繰り出して、やる気を高める
- セッションの最後で力強い質問を投げて、思考や行動を継続させる
- ビジョンのヒントは過去にある
- 社員の力を結集するために、ビジョンで具体的なイメージをもたせる
- メリットという切り口で、多角的にビジョンを検証する
- クライアントのプレゼンスを、ビデオで撮って修正する
- 自分の選択的知覚は、どこに向けられているのかを意識する
- ディソシエーションやアソシエーションで、成功をイメージする
- ハードルを超えたときは承認のチャンスである
- 身近な鏡を使うことでも、自己客観視力を磨くことができる
- オートクラインは話すだけでなく、文章に書いても起こる
- コーチングの進捗がないときは、アンケートで客観的な情報を集める
- セッションとセッションの間でも、コーチングは継続される
- 自己効力感が上がっているときに、次の課題を明確化する
- Presenceの変化をフィードバックで気づかせる
- 相手の行動の変化は、自分の行動の変化で誘発する
- コーチングを受けるメリットは、ゴール達成だけではない
- 商品化しないアイデアでも、情報を共有することで提案者を承認する
- コーチングのエバリュエーションは、クライアントが行なう
- コーチングの満足度を点数化して、次の課題を明確にする
- ビジョンが明確になれば、行動の軸が定まり、言動にも迷いがなくなる