Project

General

Profile

ザ・ファシリテーター

ザ・ファシリテーター
森 時彦

はじめに

ファシリテーションとは何だろうか?私は、「人と人とのインタラクション(相互作用)を活発にし、創造的なアウトプットを引き出すもの」と定義したい。チームが課題を共有し、効果的に考えを交流させ、創造的な答えを導き出す。動機が内在化し、自発的で活力に溢れた行動が生まれる。1+1が2以上になるようなポジティブな化学反応が現れる。これが、優れたファシリテーションの効果である。

第1章 リーダーズ・インテグレーション

組織は、形成(フォーミング)された後、すぐに機能(パフォーミング)しはじめるのではなく、その前に、ストーミング(混乱・対立)があり、ノーミング(統一)が進んではじめて機能しはじめるというモデルである。英語では、韻を踏んで、フォーミング、ストーミング、ノーミング、アンド・パフォーミングと言われる。

飲み会は、インテグレーションのときの話題が切り口となって大いに盛り上がった。年上のベテラン室長たちは、自分たちの意識が数時間前とは変わっていることに気づき、驚いている。いろいろなわだかまりが表面化され、応えられた。解消されたかどうかはまだわからないが、それなりに納得している自分がいることへの驚きだ。

第2章 開発センターの改革

話ははじめからつまずいてしまった。目標を達成するための施策を議論する会議で、目標そのものに合意が得られない。ファシリテーターの塩崎は、リョウが掲げる目標値が高すぎて全員の反感を買ってしまったと感じていたが、リョウも後に引きそうにない。いや、後には引かないというよりは、涼しい顔をして、議論を楽しんでいるかのように塩崎には見えた。

リョウは、自分の目標を無理やり押しつけたくなかった。皆に心の底から納得してもらいたかった。そのために一日や二日使うのはなんでもない。心を開いて、虚心坦懐に自分たちの置かれている事業環境を見れば、納得できるはずだ。この山中湖畔での合宿の最大の狙いをそこに置いていた。室長たちが「高い目標」を意識し、それに対して強く動機づけられる。それを達成することに情熱を燃やせるようになる。
「それができれば、やり方なんか後からいくらでも出てくる。そのきっかけをつくるのが、この合宿の真の狙いだ」

ブレーンストーミングではアイディアに対する批判はご法度だが、往々にして批判は出てくるものだ。そういう発言をいちいちとがめるのではなく、PAと題した紙を一枚用意してすばやく書き留め、話を本筋に戻す。皆に見えるようにPAを張り出しておくところがポイントだ。一種の備忘録だが、多少本筋を外した意見にも、記録することで敬意を払う。これには同じ議論が蒸し返されるのを防ぐ効能もある。

横軸に昨夜出されたコストダウンのアイディアが記され、縦軸にはPAに記された課題が列挙されていた。その二軸が交わる箱には何も書かれていない。

私はビジネスリーダーです。皆さんをリードし、結果を出すのが私の仕事。私にとってファシリテーションは、そのための道具であって、目的ではありません。もちろん皆さんの言うことをフェアに傾聴しようという意味では、偏見のない中立的な立場で聴く努力をしているつもりですが。プロセスだけでなく、議論の中身にも入っていきます。意見も言います。結果に対する責任を取るのは私ですからね。

通常、リーダーとして思い浮かべるのは、自らぐいぐい引っ張っていくタイプですよね。メンバーは、それに従うだけ。そういうスタイルをディレクティブ・リーダーシップと呼ぶ人もあります。リーダーシップにはそれだけではなく、皆さんの意見を引き出し、よく聴き、あるいは触発してチームを引っ張っていくというタイプもあるのです。

会議へのファシリテーションの応用については、30年も前にベストセラーになったハウツウ書がアメリカで出ています。マイケル・ドイルとデイヴィッド・ストラウスという人が書いたHow to make meetings work!(会議が絶対うまくいく法)という本です。たしか1976年に初版が出ています。この本が日本で翻訳出版されたのは2003年のことです。この差だけでも27年です。この本の背景にあるファシリテーションやグループダイナミックスに関する研究を含めると、30年以上の差はあるでしょう

第3章 全社改革へ

はじめは、そんな高い目標はできないという、「できない論」が山ほど出てきたのですが、「やれる方法を考えてみましょう」というふうにファシリテーションしていくうちに、チーム全体が「やれるかもしれない」「いや、達成しよう」「そのためにアイディアをもっと出そう」というように意識がかわってきました

フリップチャートの中央部にある後ろ向きのキーワードを前向きのものに書き直し、貼ってあった「できない理由」を一件一件、カードを裏返すように「できるやり方」に書き換えていきました。

「会議のやり方」というレベルのものではない。人を触発して、クリエーティブなアイディアを生む。動機づけ、行動を変えるものなのだ。

プロセスマッピングは、客観的に自分たちのプロセスを見直すのに役立つファシリテーション・ツールだ。一時流行ったBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)などでもよく使われる。これを初めて実施する人からは「どの程度詳細なプロセスまで描くのか」「描いたものをどう使うのか」という質問がよく出るが、答えは「何のためのプロセスマッピングかという目的意識をしっかり持っていれば、自ずとわかる」というところだろう。出来の悪いスタッフが、資料の重みを増すために作成するものではない。

ツリー構造は、目標達成に向けて、独立したいくつかのパスが考えられる場合や、隠れたパスを発見するために有効だ。一方、プロセスマッピングは、現在のプロセスを明らかにして、その問題点を発見したり、新しいプロセスを生み出すのに効果的だ。

我々は社員の行動を変えていかなければいけない。そのために、これから大きく組織を変え、プロセスを変えていく。しかし、社員の行動を変えられないのなら、組織やプロセスをいじっても混乱するだけ無駄というものだ

第4章 SWAT

アイデア出し(発散) 優先順位・合意形成(収束) トレーニング・エグゼキューション
ビジョン・ミッションの策定 タイムマシン法
More or Less
キーワード法
チェックリスト法
マインドマッピング
ウィッシュリスト
投票法
加重投票法
ペイオフ・マトリックス
ダブル・ペイオフ・マトリックス
目的・手段ツリー
戦略・事業計画の策定 SWOT分析
期待と課題のマトリックス
フォース・フィールド・ダイアグラム
ステークホルダー・アナリシス
プロセスマッピング
ボトルネック解析
投票法加重投票法
ペイオフ・マトリックス
ダブル・ペイオフ・マトリックス
パレート分析
目的・手段ツリー
デシジョンツリー
階層化
フェーズ管理
スコア・カード
ダッシュボード
プロセス改善 プロセスマッピング
ボトルネック解析
管理図
システム・ダイナミックス
投票法
加重投票法
ペイオフ・マトリックス
ダブル・ペイオフ・マトリックス
パレート分析
目的・手段ツリー
デシジョンツリー
階層化
フェーズ管理
スコア・カード
ダッシュボード
チームビルディング リーダーズ・インテグレーション
他己紹介
ジョハリの窓エクササイズ
ラボラトリートレーニング(Tセッション)
各種アイスブレーク
セールスエフェクティブネス ジョハリの窓エクササイズ
製品開発・技術開発 ニーズ・マッピング
品質機能展開
要素分析
フィッシュボーン
投票法
加重投票法
ペイオフ・マトリックス
ダブル・ペイオフ・マトリックス
パレート分析
デシジョンツリー
階層化
フェーズ管理
原因解析 プロセスマッピング
フィッシュボーン
管理図
ヒストグラム
パレート分析
ボトルネック解析
階層化
リスク分析・管理 リスク・アセスメント・テーブル
ペイオフ・マトリックス
投票法
加重投票法
ペイオフ・マトリックス
ダブル・ペイオフ・マトリックス
パレート分析
ニュースペーパーテスト
スコア・カード
ダッシュボード
人事評価 フォースドランキング
ペア・コンパリズン

料理のレシピは、機会的にその通りにやれば、ある程度の料理ができるようになっていますね。塩、何グラム、お酢、何カップを、鍋いっぱいの水に溶かしてという具合です。「ファシリテーションの道具箱」や「QC七つ道具」はそういうものではない。あそこにある道具を使って必要なことを書き込めば答えが出るというものではないのです。あくまでモノを考えるための枠組みであって、マスを埋めると自動的に答えが出るシンキングマシーンではありません。機械的に使うだけで考えようとしなければ何も出てこない。そこを勘違いすると形骸化が起こります