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スクラム

スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術
ジェフ・サザーランド

第1章 過去のやり方は通用しない

問題は仕事の進め方にあった。彼らだけでなく、大多数の人の仕事の進め方に同じ問題があるのだ。私たちがみんな、仕事はこう進めるものだと教えられ、そういうものだと信じているやり方に問題があったのだ。
プロジェクトの段階1つひとつが詳細まで書かれている。フェーズごとのマイルストーンや納期も、見ればすべてわかる。こうしたチャートは、見た目はじつに立派なものだ。唯一の問題は、間違いなく、このとおりにはならないことだ。
第一次世界大戦の遺物がなぜ、二一世紀の今でもプロジェクト管理ツールとして使われているのか、私はずっと解せないできた。塹壕戦からは卒業したのに、それを計画し実践するベースになった考え方は今でも広く使われているのだ。
この高く積まれた無駄な仕事の山は、スクラムが大きな変化になり得る理由の一つだ。意味のない仕事に人生を費やす人がいてはいけない。ビジネスとして無駄なだけでなく、その人の心をだめにしてしまう。
  • 計画は有効だが、何も考えずに計画に従うのは愚かだ
  • 検査と適応
  • 変わるか、つぶれるか
  • 早い段階で失敗し、早いうちに修正する

第2章 スクラムが誕生するまで

トヨタがこのアプローチで市場シェアを急速に拡大しているにもかかわらず、平均的なアメリカの経営者は、この手法を自分のものにして取り入れることができずにいたのだ。イーゼルに失うものはなかった。そこで、論文が取り上げていたのは製造業でありソフトウェア開発ではなかったが、このアプローチを試してみることにした。
講演でデミングはこう呼びかけた。技術者がいかに優秀であっても、彼らにまだ改善できる能力があるかぎり、リーダーである皆さんは、製品の品質と均一性のさらなる改善を目指して努力しなければなりません。したがって、最初の一歩は経営者の側にあるのです。まず、皆さんの会社の技術者と生産現場に対して、製品の品質と均一性を高めることについて、また品質に対する責任感について、あなたが情熱を持っていることを示さなければなりません。口にするだけでは何も実現しません。行動することが大事なのです。
仕事は辛かったりつまらなかったりするべきではない。流れるように難なくできるもののはずだ。仕事は喜びの表現であり、より高い目標に向かって進むべきなのだ。不可能ではない。ただそれには練習がいる。
  • 躊躇は死につながる。観察し、情勢判断し、意思決定し、行動する
  • 外に目を向け答えを探せ
  • 優れたチームとは
  • 推測ですませない。計画、実行、評価、改善のサイクルを
  • 守・破・離

第3章 チーム

高い目標を掲げ、主体的に動き、メンバーそれぞれのスキルを常に活用していけるチームをどう作ればいいのか。私はこれを長い間考えてきた。結局のところ、自分たちで動け、枠を越えろと外から呼びかけても人を動かせるわけではない。チームの中からそうした意志が生まれなければだめなのだ。外から押し付けようとしたのでは意味がない。
スクラムマスターはチームのミーティングで進行役を務め、チーム内に透明性が保たれるよう気を配る。そして何より大事な役目が、チームが仕事を進める際の障害になる事柄を率先して把握することだ。
GMはトヨタにこう伝えた。ここの従業員はひどいものだがマネジャー陣は優秀なので再雇用するべきだ。だがトヨタはマネジャー陣の再雇用を受け入れず、元々の従業員の大半を再雇用し、一部を日本へ研修に活かせ、トヨタ生産方式を学ばせた。ほどなくして、NUUMIは日本の向上と同じくらい正確かつ欠陥の少ない車を生産できるようになった。働く人は同じで、システムを変えた結果だ。
エリートや一流アスリートや特別な人たちにしかできないことではない。意欲を引き出す適切なフレームワークを用意し、自分たちで仕事を進める自由と権限を与え、それを尊重する姿勢があればいい。卓越した境地は外から与えられるものではない。内側から生まれなくてはいけない。だがわれわれ全員の中に、それは備わっている。
  • 正しいレバーを引く
  • 境界や限界を越える
  • 主体性
*機能横断性
  • 小さなチームが勝つ
  • 非難は無意味

第4章 時間

コミュニケーションが充実しているほど、言い換えればメンバーが共有している情報が多いほど、チームのスピードは上がる。
コミュニケーションを妨げるのは、仕事を専門化することだ。グループ内の役割や肩書の数と言ってもいい。何かに特化した肩書がつくと、人は概してその名前に合致した仕事しかしなくなる。そしてその役割についてくる権限を守ろうとして、自分の持つ知識にしがみつこうとするものだ。
誰かがこのタスクは一日かかると言えば、他の誰かが一緒にやれば一時間でできると提案する。毎日のミーティングのあと、「よし、今日はこれを完成させよう。これに取り組もう」と声が上がる。チームみずからがいい仕事をしたいと思う気持ちが必要なのだ。
  • 時間には限りがある。それを心して使うこと
  • デモで実物を見せる
  • 肩書を捨てる
  • 全員が情報を共有する
  • ミーティングは一日一回

第5章 無駄は罪である

人間の行動パターンをつかみ、ネガティブでなくポジティブなパターンを作れたら? みずから強化していけるいい循環を作って、人間のよい面を伸ばし悪い面の影響を軽減できたら? スクラムの中に日ぎと週ごとのリズムを取り入れて私がしたかったのは、すべての人が鏡に映る自分を好きになれるチャンスを作ることだったといってもいい。
得意だからマルチタスキングをするのではありません。注意力が散漫なため同時にあれこれやろうとするのです。他のことに手をつけようとする衝動を制御できないということです。
遅くまで働くのはコミットメントのしるしじゃない、うまくいっていないことの表れなんだ。スコットはそう言ったという。「みんなにバランスのとれた生活をしてほしいから言ってるわけじゃない。その方が仕事がはかどるからなんだ」
無駄な動きはどこにもない。ただ持てる力を引き出しているだけだ。それを妨げるものはすべて無駄なのだ。鍛錬と流れに注目して仕事をとらえてみると、すばらしい仕事ができるようになる。
  • マルチタスクは失敗の元
  • 「半分できた」はできていない
  • 最初から正しくやる
  • 仕事のしすぎは悪循環を生む
  • 無理はしない
  • ヒーローはいらない
  • 無駄なポリシーはいらない
  • 困り者は無用
  • 流れるような境地をめざす

第6章 幻想を捨て、現実的なプランニングを

プロジェクトの初期段階に出す見積りは、実際にかかった時間の4倍から4分の1までのばらつきがある。誤差の範囲は16倍だ。プロジェクトが進行し中身が固まってくると、見積もりは実際の状況に近づいていき、最終的には全容が見えてくる。
スクラムは組織の文化を変えられる。変化を不安に思う人もいるかもしれない。確かにメドコでも、変化についていけなかった社員は去ってもらうことになったという。だがそれは能力がなかったからではない。持っている知識や情報を保身のため自分の中に抱え込み、チームや会社のために役立てるよりも自分の存在意義を死守することを優先したからだ。そうした文化を変えてこそ、真に優れた結果が生まれる。
  • 地図は実際の地形ではない
  • 必要な分だけ計画する
  • 犬のサイズに例えてみる
  • 神託に耳を傾ける
  • ポーカーで見積もる
  • 仕事はストーリー形式で
  • ベロシティを把握する
  • ベロシティx時間=完了
  • 目標の設定は大胆に

第7章 幸福

人は誰でも幸せになりたい。自己満足にとどまる腰の引けた幸せでなく、能動的に幸せでありたいと思う。トーマス・ジェファーソンも、みずから追求した結果手に入る幸せをとりわけ称えている。われわれは追求することで幸せになれるらしい。スクラムは正しく実践すると、働く人、顧客、経営陣、株主に幸せをもたらしてくれる(基本的にこの順番だ)。
客観的で科学的なやり方に慣れていた私は、人が力を発揮できるように導いたり、他の人の日常生活をプラスの方向に転換させたりするには、自分が変わらなければいけないのだと理解するまでにしばらくかかった。最初にスクラムを導入して試行錯誤するうちに、本当に優れた仕事は喜びに根ざしているのだとわかってきた。良い換えれば、喜びに満ちていることが成功への第一歩なのだ。
研究結果は驚くほど明らかだ。幸福な人は家でも職場でも、人生全般において、そうでない人よりうまくいっている。収入も多く、いい仕事に就き、大学を出て、長生きする。ほぼ例外なく、何につけても幸せな人の方がうまくいっている。
人は成功しているから幸せなのではない。幸せだから成功するのだ。幸福は成功に先立つ要素であるということだ。
この少年が賢い道化だ。人々が表面上受け入れている事実が、実際は合意の上の幻でしかないこと、つまり王様が何も着ていないことを、少年は指摘した。賢い道化がいれば尊重するべきなのだ。
スクラムが目指すのは、チームのやる気を起こし行動につなげる考え方だ。チームがともに仕事に取り組むことで、快楽型タイプには先に目を向けてもらい、悲観型タイプには腐らなくても未来はあると力づけ、永遠と走り続ける出世競争型のマネジャーにはもっといいやり方があると伝えられる。
幸せだ、満足している、それだけでは足りない。幸福は結果を生み出すことにつなげなければいけない。スクラムの要素はどれもそれを実現するためにある。
  • 大事なのは度そのものであり目的地ではない
  • 幸福こそ大切
  • 幸せを量的に把握する
  • 日々進化する。進化を評価する。
  • 秘密主義は弊害でしかない
  • 仕事を見える化する
  • 幸せとは主体性、スキルアップ、目的
  • 幸せのバブルを打ち破る

第8章 優先順位

すばらしいアイデアがあり、人々がわくわくするような、そして市場にもぴったりはまりそうなスマートな製品を作っていて、これは成功しないはずがない、と思うような会社をたくさん見てきた。だが想像力もインスピレーションも努力も揃っているのに、製品を作る人たちがそれを収入に結びつけられていないケースは多い。
「観察」と「情勢判断」をふまえて「意思決定」し、それを「行動」に移す。そして自身の行動と相手の行動から生じた結果を観察することで次のループが始まる。ビジネスの話であれば、観察する「相手」は市場の反応になるだろう。
選択肢は明らかだ。変わるか、つぶれるか。相手の意思決定ループに入り込めなければ、相手がこちらのループに侵入してくる。
  • リストを作り優先順位をつける
  • プロダクトオーナーの役割
  • リーダーは「ボス」ではない
  • プロダクトオーナーの資質
  • 観察、情勢判断、意思決定、行動(OODA)
  • 恐れ、不安、疑念
  • 変更は無料に

第9章 世界を変える

スクラムはソフトウェア開発の世界で始まった。今では、仕事という仕事のあらゆる分野に裾野を広げている。スクラムを採用しているプロジェクトは宇宙船の開発から給与支払いの管理、人材開発まで多岐にわたり、業種もファイナンスから投資、エンタテインメントからジャーナリズムまで幅広い。
フラットな組織は、あなたの仕事とそれを楽しむ顧客との間を邪魔する、組織の壁を取り払ってくれます。どの会社も「顧客こそがボス」だといいますが、ここではその言葉に強い力があります。顧客が求めるものは何かをみずから探り、それを顧客に提供するを阻む、形式的な手続きは私たちの会社にはありません。「これは責任重大だぞ」と感じるとしたら、そのとおりなのです。
  • スクラムは人間のあらゆる取り組みを後押しする
  • 学校で取り入れる
  • 貧困対策に取り入れる
  • 肩書を捨ててみる