仏教
菩薩¶
仏道修行を通じてこの我執が取り除かれたとき、周囲の人々やあらゆる生き物に対して慈悲心が開花します。この慈悲の心を完全に体得したとき、自分と他人の対立・区別が無くなり、他人の幸福は自分の幸福、逆に他人の不幸は自分の不幸という、自他一致の心理が生まれます。また、自分が幸福になれば、その福徳を少しでも他の人々に役立ててもらおう、という心理が作用します。わかりやすく言うと、それは抜苦与楽の精神に尽きます。苦をなくして楽を与えるという意味です。このような心を持ち、実際に行動に移す者を、仏教では菩薩と呼んでいます。
四聖句¶
- 教外別伝 -
お釈迦様の教えを集大成した経典のほかに別の教えがあるわけではない。経典の心、すなわちお釈迦様の悟りの境地を日常の修行の中から直に掴むのである
- 不立文字 -
お釈迦様の悟りの境地は言葉や文字では伝えきることは出来ない。言葉や文字の限界を知り、まず自ら体験することだ
- 直指人心 -
徹底して自己の内奥を見つめつくし「人間の心は本来清浄なもの」というお釈迦様の悟りを自分のものとし、何ものにも動かされない本来の自己を発見しなければならない
- 見性成仏 -
本来そなえている仏性を自覚すれば、自ずと仏になれるのである
三学¶
三学とは、仏道を修行する者がかならず修めるべき基本的な修行項目をいう。
- 戒学 -
戒律のことで、「戒禁」ともいい、身口意の三悪を止め善を修すること。律蔵に相当。
- 定学 -
禅定を修めることで、心の散乱を防ぎ安静にするための方法を修すること。経蔵に相当。
- 慧学 -
智慧を修めることで、煩悩の惑を破って、すべての事柄の真実の姿を見極めること。論蔵に相当。
四諦¶
四諦の教えは、初転法輪から入滅の直前まで、釈尊が一貫して説かれた人生の真理。四苦八苦(しくはっく)を滅する方法を説いたものです。
- 苦諦 -
苦に関する真理。人生とは本質的に苦であると説いています
- 集諦 -
原因に関する真理。人生が苦である事の原因を明らかにしている
- 滅諦 -
原因の消滅に関する真理。苦の原因である煩悩(ぼんのう)の消滅が苦の消滅です
- 道諦 -
道=実践(方法)に関する真理。苦の原因を取り除く方法を説いています
八正道¶
「正しい」とは「真理に合った」・「調和のとれた」考えや見方、行動をさし、小我「自分本意」にとらわれて、自分自身を過大評価し、不平・不足・不満などの苦の種をつくらない大きな立場で物事を判断できる人間となる事を示す道として解き明かしたものである。
- 正見 -
我の意識を離れ、正しく物事を見る事
- 正思惟 -
正しく物事の道理を考える事
- 正語 -
真実のある正しい言葉を語る事
- 正業 -
正しい行為。間違った行いをしない事
- 正命 -
正法に従って清浄な生活をする事
- 正精進 -
正しく目的に向かって努力する事
- 正念 -
邪念を離れて正しい道を思念する事
- 正定 -
正しく精神を集中して安定させる事
六波羅蜜¶
菩薩というものは、声聞界や縁覚界の境地を離れて、仏様のお教えを守り、自らを仏様の心に近づけるべく精進を重ね、その結果として迷いを離れ、他を救う働きをいいます。この六波羅蜜の法門はすべて自他を救うことが前提となっています。
- 布施波羅蜜 -
布施をすること
- 持戒波羅蜜 -
戒律を持って生きること
- 忍辱波羅蜜 -
堪え忍ぶこと
- 精進波羅蜜 -
努力すること
- 禅定波羅蜜 -
座禅すること
- 智慧波羅蜜 -
前五つの波羅蜜の実践によって得られる智慧
無財の七施¶
- 眼施 -
優しい眼差しで人に接する
- 和顔施 -
和やかな明るい顔で人に接する
- 言辞施 -
優しい言葉をかける
- 身施 -
身をもって布施する
- 心施 -
心の底から人を思いやる慈悲心を施す
- 牀座施 -
例えば、先輩やお年寄りに自分の席を譲る行為
- 房舎施 -
例えば、困っている旅人に一夜の宿を提供したり、休憩の場を提供したりする行為
不純な七施¶
- 随至施 -
あまりにしつこく乞われるので断りきれずにする布施
- 怖畏施 -
それをしないと具合が悪くなりそうなので、しかたなくする布施
- 報恩施 -
恩返しのためにする布施
- 求報施 -
返礼を期待してする布施
- 習先施 -
習慣であり、先例にもとづいてする布施
- 希天施 -
その功徳によって天界に生まれたいと希望してする布施
- 要名施 -
名声を高めるためにする布施
四苦八苦¶
「諸行無常」の真理を悟り、今の苦しみは永遠のものでもないし、今の楽しみや喜びも永遠ではなく一時的なもので、これらの現象にとらわれない生活習慣をつけることが修行にほかなりません。
- 生 -
生きるということは苦である
- 老 -
老いていくことは苦である
- 病 -
病にかかることは苦である
- 死 -
死ぬということは苦である
- 愛別離苦 -
愛するものと別れるのは苦である
- 怨憎会苦 -
怨み憎む者と会うのは苦である
- 求不得苦 -
求めても得られないのは苦である
- 五蘊盛苦 -
人間の五官で感じるものや心で感じる人間の肉体や精神活動すべてが物事にこだわりをつくる苦しみ
十二因縁¶
諸法実相すべての存在・ありのままの姿をもっと深く理解させるために、縁起の角度から説かれた教えが『十二因縁』です。この教えは、人間の肉体生成を十二種の法則に分類し、心の変化にも十二に分かれた因縁の法則があるという教えです。
- 無明 -
過去世の無始の煩悩。煩悩の根本が無明なので代表名とした。明るくないこと。迷いの中にいること
- 行 -
志向作用。物事がそのようになる力=業
- 識 -
識別作用=好き嫌い、選別、差別の元
- 名色 -
物質現象(肉体)と精神現象(心)。実際の形と、その名前
- 六処 -
六つの感覚器官。眼耳鼻舌身意
- 触 -
六つの感覚器官に、それぞれの感受対象が触れること。外界との接触
- 受 -
感受作用。六処、触による感受
- 愛 -
渇愛
- 取 -
執着
- 有 -
存在。生存
- 生 -
生まれること
- 老死 -
老いと死
六根清浄の功徳¶
六根清浄とは六根にそなわる煩悩の汚れが払い落とされ、物事を正しく判断できる智慧を得ることをいうのです。
- 眼根の功徳 -
すべての事象が明らかに見え物事の因果を正確に知ることができる
- 耳根の功徳 -
あらゆる音声から、実・不実を聞き分けることができる
- 鼻根の功徳 -
あらゆる臭いを嗅ぎ分け、分別を誤ることがなくなる
- 舌根の功徳 -
勝れた味覚を持ち、さらにその声は深妙となり、聞く者を喜ばせる
- 身根の功徳 -
穏やかで健全な身体となり、外界の刺激に適合させ、自身を処することができる
- 意根の功徳 -
心は清らかに、頭脳は明晰となり、智慧が深くなる