組織のマネジメント
組織¶
組織の定義¶
複数の人々の意識的に調整された活動や諸力のシステム
(バーナード「経営者の役割」1938年)
組織の基本要素(成立要件)¶
- コミュニケーション
- 貢献意欲
- 共通目的
モチベーション¶
動機づけ理論¶
- 内容理論 -
何が人を動機づけるのかを解明する
- 過程理論 -
どのような心理的過程で人を動機づけるのかを解明する
内容理論 - ERG理論 (アルダーファー)¶
マズローの欲求階層理論の修正
- 生存欲求 Existance (生理的欲求・安全欲求)
- 関連欲求 Relatedness (所属欲求)
- 成長欲求 Growth (尊厳欲求・自己実現欲求)
- 上位欲求の充足により下位欲求が活性化・強化される
- 複数の欲求の同時発現・活性化もあり得る
内容理論 - 二要因理論 (ハーズバーグ)¶
職務満足と職務不満の理論的仮説
- アダム的本性 環境からの生理的苦痛や不快感を回避したい
- 職務環境は職務不満に関係する
- 衛生要因:会社の政策・管理、作業条件、対人関係、給与、監督技術など
- アブラハム的本性 自己実現欲求や精神的成長により潜在能力を実現したい
- 職務内容は職務満足に関係する
- 動機づけ要因:達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長など
動機づけ要因を重視した職務内容についてのマネジメント手法「職務充実」
計画、組織化、実行、調整、統制を組織メンバーや集団に付与する
垂直的職務の負荷の原則を提示し、職務の再設計を提案する
過程理論 - VIE理論 (ブルーム)¶
動機づけ=期待✕手段性✕誘意性
- 期待 -
本人が仕事で頑張ればどれだけの確率でこれらの報酬が得られるかの評価
- 手段性 -
誘意性をもたらす手段的行為の努力度
- 誘意性 -
組織から得られる、給与や昇進、仕事の面白さ、良好な人間関係などの報酬
過程理論 - 期待理論 (ポーター、ローラー)¶
本人の努力と得られる報酬の関係が明確である場合の理論
- 内発的報酬 -
仕事から得られる達成感や喜びなどの精神的な報酬
- 外発的報酬 -
給与や賞与などの物的報酬や昇進・昇格などの報酬
内容理論、過程理論 - 内発的動機づけ (デシ)¶
自らの有能さと自己決定の欲求によって動機づけられる理論
- 仕事への没入や継続的な努力などの効果がある
- 成熟した個人にとって外在的報酬よりも内発的動機づけに意義がある
- 外発的動機づけがかえってマイナスの影響を与えかねない
モチベーション3.0 (ピンク)¶
「内在的報酬」の働きや、動機づけ要因に含まれる仕事の達成感などに着目
- 自律性 -
自律した個人として自由に仕事ができる環境
- マスタリー -
自ら積極的に関わり向上心を持ったその道の達人
- 目的 -
社会や世の中の役に立つ
リーダーシップ¶
マネジメント・システム論 (リッカート)¶
組織をシステムと捉え、変数間の相互関係によって構成されていると特徴づける
- 権威的(独善的専制型、温情的専制型、相談型)
- 原因変数:強制的高度の業績目標、高圧的な監督
- 媒介変数:上司への非好意的態度、不信感、生産高の制限
- 結果変数:短期で高い生産性、長期で低い生産性、高い欠勤率、高い離職率
- 参加的(集団参画型)
- 原因変数:指示的関係の原則、重層的集団意思決定、自主的高度の業績目標
- 媒介変数:上司への好意的態度、高い信頼感、集団への高い忠誠心
- 結果変数:低い欠勤率、高い生産性、少ない不良、低コスト、高収益
集団参画型の基本的概念
- 指示的関係の原則
- 集団的意思決定
- 高い業績目標の設定
リーダーシップスタイル研究¶
「仕事軸」と「人間軸」の2つの次元に集約してリーダーシップスタイルを捉える
- ミシガン研究 -
「職務中心的監督」と「従業員中心的監督」
- オハイオ研究 -
「構造づくり」と「配慮」
- PM理論 -
「目標達成機能(Performance)」と「集団の維持機能(Maintenance)」
X理論・Y理論 (マクレガー)¶
- X理論
- 人間は生来仕事が嫌いで、できるだけ避けようとするものである。
- 彼らに努力させるには、強制・統制・命令・処罰を加えなければならない。
- 普通の人間は命令される方が好きで、責任をとろうとせず、野心もなく、安全を望んでいる。
- Y理論
- 人間は生来仕事をすることをいとわない。仕事は条件次第で満足の源にもなる。
- 進んで働きたいと思う人間には統制や命令は役に立たない。
- 進んで働く人間は責任も積極的にとるし、創意工夫をして問題を解決する。
Y理論のリーダーシップにおける変動要素
- リーダーの個人的特性
- 部下の態度、欲求やその他の個人的特性
- 組織の目標、構造および果たすべき職務の性質などの特性
- 社会的・経済的および政治的環境
コンティンジェンシー理論¶
バーンズ、ストーカー¶
組織と環境との関係を組織構造にスポットを当てたコンティンジェンシー理論
- 機械的管理システム -
安定した技術的・市場的条件に適している
- 有機的管理システム -
変化する諸条件(環境)に適している
ウッドワード¶
企業組織の活用する技術が異なれば、組織構造も異なる(ウッドワード)
- 個別受注生産 -
フラットな組織で有機的組織管理体制を取る
- 大量生産 -
機械的組織管理体制を取る
- 自動連続装置生産 -
背が高い組織で有機的組織管理体制を取る
ローレンス、ローシュ¶
組織内部の状態・プロセスが外部の要求条件に適合していれば、組織はその環境に効果的に適用できることを証明
- 組織の分化(Differentiation) -
組織内の販売、製造、開発部門はそれぞれ異なった外部環境と対応している
- 組織の統合(Integration) -
組織全体の目標達成のために、各部門の活動の連携をとり、統一すること
フィドラー¶
リーダーシップの測定尺度としてLPC(Least Preferred Co-worker)スコアを開発した
分析対象の集団を3つに類型化し、集団の性格でリーダーの役割などが異なると指摘する
- 相互依存型集団 -
個々の集団メンバーが互いに情報を交換し、細部の点についてまで十分な調整をしながら維持・存続している集団
- 独立並行型集団 -
各メンバーが各自の課業を他のメンバーと意見調整なしに、独立して行う集団
- 対立統合型集団 -
対立する意見についてメンバーが交渉や取引を行う集団
ハーシー、ブランチャードのSL理論¶
部下の人格的な成熟度を状況変数として状況的リーダーシップ理論を展開
- 成熟度の状況変数
- 高い目標を達成しようとする達成意欲の強さ
- 責任をもって行動する責任意識と責任を全うする責任能力
- 教育や経験の程度
- リーダーシップ行動
- 部下の成熟度が低い段階:協労的行動を抑えて課題志向行動を強めた「教示的リーダーシップ」
- 部下の成熟度が高まる段階:部下の協労的行動が高まり、課題志向行動も強い「説得的リーダーシップ」
- 部下の成熟度が平均以上に高い段階:自律的にリーダーの意図する行動がとれるため、課題志向行動を弱めた「参加的リーダーシップ」
- 最高度に成熟度が高い段階:「委任的リーダーシップ」が有効
マネジャー¶
リーダーのパワー(フレンチ、ラーベン)¶
- 合法力 -
特定の地位にある個人に割り当てられるパワー
- 報酬力 -
給与や昇進その他の報酬の提供やその量的な決定ができるパワー
- 強制力 -
マネジャーとして部下に(罰などの)影響力を与えるパワー
- 専門力 -
特別なスキル・知識・能力・経験などの専門性に関わるパワー
- 同一視力 -
個人的な脂質が強みとなって部下に影響力を行使できるパワー
- 情報力 -
必要な時に必要な情報を持って活用できるパワー
- カリスマ力 -
その人物特有のキャラクターで他社に影響を与えるパワー
フォロワーシップ論 (ケリー)¶
- 孤立型:批評的思考、消極的関与
- 消極型:依存・無批判、消極的関与
- 順応型:依存・無批判、積極的関与
- 模範型:批評的思考、積極的関与
マクロ・アプローチ¶
組織構造¶
組織が共通目標の効果的達成を目指し、そこに集う人々の諸活動の役割が分担され、相互関係により秩序立てられた分業関係のパターン
- 公式化 -
制度や規則などの明文化された程度
- 専門化 -
仕事の専門性に応じた細分化の程度
- 標準化 -
一定の方法・手続きで遂行される作業範囲の程度
- 権限階層 -
管理者による統制の幅と組織階層の数
- 複雑性 -
組織内の諸活動・サブシステムの数
- 集権化 -
意思決定のトップマネジメントへの集中度
- 各種人員比率 -
管理者比率、直間比率、専門スタッフ比率
組織形態¶
- ライン組織
- ライン・アンド・スタッフ組織
- 職能別組織
- 事業部制組織
- カンパニー制
- マトリックス組織
- チーム型組織
官僚制の逆機能 (マートン)¶
- 訓練された無能 -
規則重視主義のため、手続き上例外的な事象については対応しない
- 最低許容行動 -
自発性の欠如で、決められたことさえ忠実に行っていればよいという考え方
- 顧客不満足 -
顧客中心ではなく、自分の所属している職場中心の論理で行動するため、窓口主義などで顧客の不満足を招く恐れがある
- 目標の置換 -
あるべき目標が手段に転化してしまうことである。組織防衛が目的化してしまうこと
- 個人の成長の抑制 -
優先事項が組織効率と組織維持のため、顧客の満足のみならず、組織メンバーの成長・育成も二の次になってしまう
- 革新の阻害 -
現状維持が優先されるため、革新的な取り組みには後ろ向きで、組織メンバーも既得権益を喪失しないようにイノベーションに対する抵抗も強くなりがちである
組織の変革 (レヴィン)¶
- 解凍 -
組織において、現時点での行動、態度、文化などのマイナス点を認識して、新たなものを受け入れる状態を作り出す段階、組織変革への動機づけを創り出す段階
- 変革 -
新たな行動や組織文化を植え付けるためにアクションをとる段階
- 凍結 -
新しい行動などが変化に持ちこたえることができるように、組織に浸透・定着させる段階
推進力と抑制力が拮抗するのが現状維持、推進力が抑制力を上回るほど変革を実現するには望ましい状態
組織変革を成功裏に導くためのトップの条件¶
- トップのイニシアティブ -
変革・革新がトップの強い危機意識によって開始される
- トップの強いかかわり合い -
トップとの連携の密度が高いほど変革の進展が円滑である
- 意識的なカオスづくり -
意識づくりとして、意図的に一種の混沌状態をつくりだす
- 変革プロセスのアプローチの組み合わせ -
トップダウンとボトムアップを組み合わせ、ミドルを変革の中核とする
組織変革の留意点¶
- 何を持って変革の成否を判断するのか -
単に、業績面の数字だけの問題としてだけで判断することなく、組織の主役たる人的資源の活性化の観点から組織変革について考える視点が必要といえる。
- 変革するという意思決定は適切か -
企業の課題は多様化しているため、組織の望ましい姿はそれぞれ異なり、安直な理由により組織変革を導入するか否かの意思決定について自問自答し、慎重に検討することが求められる。
- マクロとミクロのマッチングは適切か -
マクロとしての組織構造や形態などの課題と、ミクロとしての人的資源の雇用や処遇・報酬システムなどの課題について、それぞれの性質が適合したものとなることが望まれる。
組織文化¶
人々が平常いかに行動すべきかを明確に示す、非公式な決まりの体系
形成要素(ディール、ケネディ)¶
- 企業環境 -
事業を行う環境によって、成功するためには何をしなければならないかが決まる。
- 理念 -
組織の基本的な考えや信念で、企業文化の中核をなしている。
- 英雄 -
これらの人々は文化の理念の化身であって、目に見える形で理念を実践してみせ、メンバーの手本となる役割モデルになる。
- 礼儀と儀式 -
社内の日常生活で体系的に、あるいは行事として行われる慣例である。
- 伝達 -
伝達としての「文化のネットワーク」は、組織内での主要な通信手段として、企業の理念と英雄の神話の「伝達機構」になっている。
組織文化の形成要因 (野中郁次郎)¶
- 組織の価値
- 英雄
- リーダーシップ
- 組織機構
- 管理システム
- 儀式・運動
- 環境特性
組織における共通の価値観¶
企業文化は組織メンバーに対する行動規範・行動指針を示すことで、彼らの意思決定や行動の拠り所となる。
- 組織メンバーの一体感・チームワークの形成
- 組織メンバーのモチベーションの高揚
- 組織メンバーの自主的・自発的な職務遂行を可能
- 業務上のコスト削減
- 企業イメージや信頼の醸成
シンボリックマネジャー¶
主要任務は状況の変化から生じる価値理念の衝突を管理することである
- 文化と文化が長期的な成功を及ぼす影響を敏感に感じ取る
- 仲間の社員に高度の信頼を置き、これら文化の道連れの力を頼りに目的を達成する
- 自らを会社の日常業務というドラマにおける演技者であると考え、それを実行する
組織風土¶
組織風土の次元¶
- 知覚された構造と制約
- 経験された温かい雰囲気
- 支持と激励
- 必罰主義か信賞主義かどちらかの重視
- 管理者によって設定される業績基準
組織風土と構成員の内発的動機づけ¶
- 温かさの風土は、動機づけにプラスに影響する
- 自己実現を促進するような風土は、内的動機づけにプラスに影響する
- 未熟な管理風土もプラスに影響する
- 官僚制化については、動機づけの程度が低下する
戦略の心理適合¶
海外の企業と比べ、日本企業は簡単に人材をカットできないので、このような作戦が必要になる
一体化の焦点(一体化への5つの要件)¶
- 小さな戦略を大切にする
- シンプルかつ明快な基本コンセプトをもつ
- 方向性を象徴する戦略を具体的に組み込む
- あえて難しいことを初期に優先する
- 少し良いことを持続的に狙う
組織の勢い(戦略が組織の勢いを作る4つのポイント)¶
- 企業の将来あるべき姿を提示する、「旗を掲げる」
- 「小さな成功」を戦略実行の初期の段階に組み込む
- 利益獲得で勢いを保つ
- 組織構成員が「集中」して同じことを行う機会をしばしば設ける
想像的緊張¶
- 新しい分野 - 新しい問題解決に立ち向かわせることが想像的緊張のきっかけとなる
- コンセンサスのぎりぎり - 新分野を狙うには組織にコンセンサスが得られるギリギリを狙う
- まず切ること - 条件を満たさない事業は切り、切られなかった事で緊張感が生まれる
- 北風にさらす - 厳しい状況に我が身をさらすことで自分自身が鍛えられる
- 組織風土に合わない戦略 - 企業の変革と飛躍の場面では、あえて組織風土に合った戦略が必要
- アンバランスな戦略 - 自発的努力により問題を認識され、是正する活動へとつながる