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組織変革論

組織変革とは、「個人の態度、信念、行動、役割や集団の相互作 用のパターン、組織そのもの等を変革の対象としてこれらのもの をある状態から別の状態へ変換していくこと

変革の圧力

  • 労働力の性質
    • より広範な文化的多様性
    • 専門家の増加
    • 不十分なスキルレベルにある多数の新規従業員
  • テクノロジー
    • 高速・安価・携帯性の高いモバイルコンピュータ
    • オンライン上での音楽共有
    • ヒト遺伝子解析
  • 経済ショック
    • ドットコムビジネスの盛衰
    • エンロンの破綻
  • 競争
    • 地球規模の競争者
    • 合併および統合
    • Eコマースの成長
  • 社会の動向
    • インターネット上でのチャットブーム
    • ベビーブーム世代の定年
    • 都市部での生活への関心の高まり
  • 世界政治
    • 中東における敵意の高まり
    • 中国の市場開放
    • 911以降のテロとの戦い

変革の引き金

  • 業績の低下
  • 戦略の転換
  • 予防的対応(強い組織づくり)
    • 変革のレディネス
    • 持続的競争優位の構築
    • 組織能力の構築

波及方法:部分スタート、変革は辺境から → 全社適応

変革のコンテント

組織は、業務、行為者、技術、構造からなり、変革へは「構造的」、「技術的」、「人間的」にアプローチできる
戦略的ロープのメタファー=政治的撚り糸(strand)、文化的、技術的撚り糸からなる

組織能力の構築
人的資本:社員のケイパビリティ,社員のコミットメント
組織資本:学習力、スピード、境界のなさ、アカウンタビリティ
企業資産:製品ブランド力と企業文化

組織文化
メンバーに共有された意味のシステム: 組織風土、慣行、規範、社員意識など

組織開発と組織変革

組織開発 組織変革
対象 社員の意識・態度
社会的関係
組織の公式的関係
経営ビジョン・使命
社員の行動をリードする信念・原則
認知的枠組み
原理 開発=既存の仕組みを「より良い状態」にすること 変革=既存の仕組みの「組み替え」をすること
目的 組織体質の強化
長期的な適応力の向上
沈滞現象・機能不全の改善
業績悪化などの環境不適応現象の顕在化
変化への予防的対応など
アプローチ 漸進的な改善・向上 根本的・抜本的な変化
学習棄却

組織開発の新動向

Bushe & Marshak (2009)
診断型組織開発: 組織開発は実証主義に立脚すると考え、データ収集→ 診断→介入の計画→介入の実施というステップを踏む。ODの実践家の役割は 組織の現状について妥当なデータを収集し診断すること。
対話型組織開発: 社会構成主義(social constructionism)などに立脚し、リ アリティは一つではなく、社会的に構成されると捉える。そのために、人々が対話 を通してお互いのリアリティを共有し、アイディアを出し合い、合意していくことが重 要だと考える。AI(Appreciative Inquiry)やフューチャーサーチ、アクションラーニ ングが該当。

AI:問題というネガティブな面に注目するのではなく、個人や組織の強みや可能性などのポジティブな面に注目し、変革を試みるアプローチ。

コッター(2003):大規模な変革を成功に導く8段階

第1段階:(関係者の間で)危機意識を高める
第2段階:(互いに信頼し熱意をもって結束し行動する)変革推進チーム をつくる
第3段階:(変革推進チームが簡潔で心躍る)ビジョンを策定する
第4段階:(いくつものチャネルを使い)ビションを周知徹底する
第5段階:自発的な行動を促す(ビジョンに基づく行動を妨げる障害を取り除く)
第6段階:短期的な成果を実現する(変革が信頼され、勢いがつくようになる)
第7段階:気を緩めない(変革の波を次々に起こしてビジョンを実現する)
第8段階:(変革リーダーが新しい文化を育て)変革を根づかせる

不安を危機感にするのがチェンジマネジメント

企業変革のマネジメント NTT-DATA

  • 予知的変革、対応的変革、危機的変革
  • 経営トップの強いコミットメントのもとにトップ主導で変革を推進するトップダウン型の変革と、社員を中心として社内を巻き込み変革するボトムアップ型の変革がある。
  • 日本企業においては、生え抜き社長が一般的であり、カリスマ性のある人物が必ずしも社長になるとは限らないし、社長に適しているとも限らない。
  • 欧米に比べて経営における社長の力量が突出しない一方で、企業活動の平場を支える社員は押しなべて優秀である。
  • 日本的雇用慣行である長期雇用と総じて熱心な社内教育のおかげで、日本企業の社員は均質で粒がそろっている。
  • カリスマ性のあるリーダーの出現を社運をかけて待つよりも、カリスマに頼らずとも、経営陣と社員とが協働して変革に取り組めるようなシナリオを描いたほうがむしろ現実的であり、かつ有効である。
  • 1993年VISION-2001「919作戦」(2001年に売上高9000億円、従業員1万人、一人当たり生産性9000万円の頭の数字を並べたもの)
  • 調査の項目は、「組織の非効率性」「社員の意識と行動」「人事の硬直性」「社員の責任とリスクへの耐性」。セクショナリズムや変革の回避といった官僚制組織の負の現象や社員の問題意識を抽出できるように設計されている。
  • 日常の社員間の会話の中では、たとえば「いわれた以上のことをしない」「規則にしたがう」「社内資料や社内会議がきわめて多い」「革新を好まない」「意思決定が遅い」といったことが組織の特徴として語られるのが常であったが、こうした社員の意識を客観データとして顕在化させ、「漠然と改革の必要性を感じている」という状態から「絶対的に改革が必要である」というという状態に経営幹部および社員の双方を方向づけることが組織診断の主要なねらいであった。
  • 説得や意識共有はたとえば数字のような共通語を使用することでしかなしえない。組織の現状を定量的に把握することで曖昧性のない共通認識をつくりたいと考えていた。
  • 何がどうなると「会社が変わった」と言えるのか、明確な到達目標をもって変革活動を開始するケースは案外少ない。
  • 人間は、自分がかかわっていることには主体的になれるが、かかわっていないことについては評論家になりやすい。
  • いかに社員を説得するかを考えるより、いかに多くの社員を活動に巻き込むかを考えた方がNTTデータのやり方としては効果的である。
  • 経営層を変革のスポンサーとし、現場の社員を変革リーダーとして、経営トップと社員が一緒になってビジョンを策定するような体制を考えた。
  • 企業理念は恒久的であっても、日々の事業活動においては常により高い目標を設定し、実現へ向けて邁進し、自己革新できる企業でありたい。ビジョンは、そのためのストレッチした目標設定である。
  • IT化の目的は生産性の時代から市場創造の時代へと入っていく。これまでITは3日かかっていた業務が半日でできるようになるといった生産性向上や効率化のための手法であったが、これからは新たな顧客をどのように増やすか、あるいは新たなビジネスをどのように創造していくかなど価値創造のためのツールになる。
  • お客様にどのようなイノベーションを提供することができるのかを考えながらやる。
  • アイデアそのものの斬新さはなく、表面的な問題のとらえ方と平凡な問題解決に帰結してしまう傾向にあり、事務局側も果たしてステアリングコミッティに具申するほどの成果を短期間のうちに創出できるのか気を揉んだ。
  • 価値のある、意味のある議論が深まるにつれ、会社に対する無責任な不満や批判的な言動は一切なくなった。集結から2週間あまりが経ち、課題にどっぷりつかって議論するうちに、彼らは現状の問題に対する批評家から当事者へと変貌し、活動へのコミットメントを強めていった。
  • この世代は、自分たちの頃に比べて冷めたところのある世代だと思っていた。今まで自分たちは、彼らにこうした機会を十分に与えていなかっただけで、彼らには会社の成長を願い、それに貢献しようとする気概も力もあるのだということに気付かされた
  • ワーキンググループのメンバーの思いと努力は十分に伝わった。できるかぎり、彼らのコンセプトと文言を使いたい。
  • 確定したビジョンを押し付けるのではなく、まずはビジョンを第一次案として社員に投げて、社員の意見を聞く機会が必要であると考えた。社員の意見をビジョンの新版として反映することで、ビジョン策定プロセスにできる限り多くの社員がかかわることができれば、社員もビジョンを自分のものとして意識することができるだろう。
  • 実際に声を上げた投稿者の数は延べで100人。全社員のわずか1.25%でしかなかった。
  • 経営陣や経営企画スタッフがどんな活動をしているかなど情報収集はするものの、主体的にはかかわらない。そんな風潮があらためて明らかになった。
  • 元気な組織はおしゃべりであるといわれるが、NTTデータには上位の話を静かに聞く文化がある。
  • 頭が良く、優秀なこともあり、解決策をにらみながら、あるいは落としどころを見極めながら議論するようなところがある。こうした予定調和的な議論の在り方を打破するために、そして率直でオープンな議論を実現するためにディスカッションルールを設定した。
  • ビジョン実現の年として設定している10年後。間違いなく僕はこの会社にいない。僕は今のことを精一杯やるが、10年後に組織を率いているのは君たちである。だからこそ、君たち自身で10年後の会社の将来を思い描き、それを目指してがんばってほしい
  • 人を動かすのは、危機感と夢だ。歴史を見ても危機感と夢に突き動かされた時に人は大きな成果を成し遂げる。われわれは近い将来に危機が見えている。今がよければ後は知らないというのは無責任だ
  • 日本人は概して控えめで二律背反より曖昧性を重んじるところがあり、自分の意見を白黒はっきりいわない傾向にある。したがって、中立という意見は大抵の場合実質的な反対と考えて良い。

変革がうまくいかない要因

  • 計画
    • 経営陣や社員の中に十分な危機感が醸成、あるいは共有されていない
    • 十分な変革シナリオが策定されないままに活動を開始する
    • 変革へのコミットメントをもったチームを築かない
  • 実行
    • 明確なビジョンや方針をもたない
    • 将来の成長を感じられない、わかりづらいビジョンや方針をつくってしまう
    • 社員がビジョンを理解し、共鳴するための浸透活動が不十分である
    • 変革に対する社員の不安や不信感に対処しない
    • 目に見える成果がなかなか出せない
  • 定着
    • 一つ二つの変化によって、変革が達成されたと勘違いする
    • 抵抗勢力や組織ルールなど変革実現に向けての障害を克服できない
    • 継続的な活動ができない

変革のステップ

  1. 現状を可視化する - 危機意識を高め、変革が必要であることを広く共有する。
  2. 変革シナリオを策定する - 組織上の課題を踏まえながら最終ゴールまでの変革のシナリオを策定する
  3. 変革推進チームをつくる - 大規模な変革を先導する力のあるチームを編成する。
  4. 適切なビジョンを掲げる - 変革の方向性を明確に示す、わかりやすいビジョンを策定する。
  5. ビジョンを周知・徹底する - 社員とのコミュニケーションを繰り返しながら、新しいビジョンの浸透を図る。
  6. ビジョン実現に向けて i. 短期的な成果を実現する - 取り組むべき課題を選別し、小さくてもいいから具体的な成果を早期に創出する。 ii. 現場のリーダーシップを促す - 周囲で起こる変化に乗じて社員の自発的な行動を促す。
  7. 困難な課題に取り組む - 必要な制度や仕組みを導入するとともに、従来型の行動に引き戻すような組織の仕組みを変更する。
  8. 活動を継続する - 変化の波を次々と起こし、ビジョンを実現する。
  9. 変革を根づかせる - たとえリーダーが交代しようとも元に戻ることがないように変革を継続し、定着させる。

7S

  • ハードの3S
    • 戦略 - 米合衆国の原子力潜水艦としてのミッションを果たすこと
    • 組織構造 - 権限委譲=責任の付与,責任班長等
    • システム - 昇進・評価のシステム,教育制度等
  • ソフトの4S
    • スキル - 専門的知識,スキル等
    • スタッフ - 自立的行動,意欲,留まる意識等
    • スタイル - 「~します」と承認を得るやり方,事前の相互確認,学習する風土等
    • 共通の価値観 - 信条や行動指針→判断基準の提供,本質を考える=意味の探究

コッター(1987):「組織革新の理論」

中期(6カ月~数年)の課題=整合性の確保⇨モノの変換過程が効率化され、情報処理や意思決定が効果的になり組織的に安定する
短期の課題=目の前の問題の解決
長期(数年~数10年)の課題=駆動力と適応力

グローバル企業

グローバル化:世界の舞台での競争(=国の概念がなくなる)、
国境を超えて最適な人材の活用等
公器としの企業、働く意味の変化等 → アイデンティティを強固にする

グローバル化の判断基準「生産拠点が海外にあることではなく、研究開発拠点が海外にあるかどうか。」

山下現社長の言葉

  • 今回の改革を「第三の創業」と位置づけ
    • (第一の創業はNTTの民営化の時、第二は、NTTデータの独立時)
  • 改革時の問題意識
    • 社員の意識が受け身で、当事者意識が希薄化していた
    • 組織の縦横の距離感が遠くなっていた
    • 「NTTウェイ」といえる独自のカラーが確立されていない
  • 改革後の社内の変化
    • 社員の意識は確実に変わりつつある。例、社員の自発的行動(クレドーカードの作成)や提案が増加した
    • 社内SNSが社員の手で作られ、組織の縦や横の関係を超えた情報交換がなされる ようになった
  • 売上高1兆円の達成
    • 2006年度、売上高1兆円を実現(中期計画クリア)。
    • それまで業績は、8000億円台で横ばい(計画策定時に1兆円という数字の実現は 誰も信じなかった)、とくにビジョン策定、浸透活動を活発化させた2005年度以降の 業績は特筆すべきものだった。

今回のビジョン策定が目標達成の引き金になった可能性は強い

AIとは

Appreciative:1価値を与えるような、2価値を高めるた めの
Inquiry:1探求し発見すること、2問いかけること(新た な潜在力や可能性に対して目を開くこと)
→人や組織、そしてそれを取り巻く社会において何が最 高であるかを、組織メンバーの協働を通じて探求し、 その中でお互い高めあう活動
組織でまだ現出していない潜在力を、組織のあるべき姿 =ポジティブコア(潜在力の中心的要素)の中に見出 す。ポジティブコアに含まれる知識と活力を組織やコ ミュニティの変革活用に直接結びつける
→誰も想像さえしなかった変化を素早く、誰もが納得でき る形で大規模に実現する

AIの原則

  1. 社会構成主義:現実は社会的に構成される
  2. 同時性の原則:潜在力の探求と変革の実現は同時に生み出さ れる(質問は、行動と関連しており注意、知覚、エネルギー、努力を生み出す )
  3. オープンブック(=組織は開かれた本):組織の物語はメンバー によって書き継がれ、過去・現在・未来の流れは新たな学びやイ ンスピレーション、そして解釈を常に生み出す。組織は、学習、 刺激、解釈の終わりなき源。
  4. 予期成就の原則:未来のイメージが現在の行動と達成を導きそ れを触発する
  5. ポジティブ性:ポジティブな質問がポジティブチェンジを生み出 す他に、感情は伝染する、全体性、体現(エナクトメント)といった 原則もある

ポジティブコアを形成する一般的な資産、強み、リソースの一覧

  • 実績
  • 重要な伝統
  • 戦略的機会
  • 実践に現れる価値観
  • 製品の強み
  • 潜在力発揮に影響力を 持つようなマクロトレンド
  • 技術的資産
  • ソーシャル・キャピタル
  • ブレークスルー
  • 全体の士気
  • 気分の高揚
  • 実践に組み込まれた知識
  • ベストプラクティス
  • 金融資産
  • 前向きな感情
  • ポジティブな未来のビジョン
  • 組織における集積知
  • アライアンスとパートナーシップ
  • コア・コンピテンシーバリューチェーン上の強み
  • 可能性のビジョン
  • 戦略優位性
  • リーダーシップ能力
  • 製品パイプライン
  • 人間関係を築き上げる上でのリソース
  • 顧客ロイヤリティ

AIインタビュー

  • これまでで、あなたが最も仕事のやりがいを感じた瞬間はどんな時ですか? どんな時にやる気が充実し、どんな時に自分の力を最大限に発揮できていると感じまし たか?
  • 自分自身、自分の仕事、そして自分の組織について、どんな長所があるのかについ て、忌憚のない意見を聞かせてください。
  • どんなことがあれば(起きれば)、組織の潜在力が最大限に発揮されると思いますか?
  • 自分の組織に対して、あなたがずっと「こうなって欲しい」と願ってきた通りの状 態が十年後に実現したところを想像してください。それは今の状態とどんなところ が異なっていますか? 理想の組織を実現する上で、あなたはどんな風に役立って いると思いますか?

4Dプロセス

  • ディスカバリー(潜在力発見)
    • 組織内外を問わず、すべての利害関係者からなるシステム全体を巻き込み、強みと ベストプラクティスを明確化していくプロセス。「これまで、そして今現在におい てメンバーはどんな時に最高の瞬間を味わっているのか」を発見するプロセス。
  • ドリーム(理想像構築)
    • 発見された組織の潜在力や、たとえば「社会は私たちに何を望んでいるのか?」と いった、より高い理想に関する問いかけをもとに、明確な成果によって示される未 来のビジョンを作り上げるプロセス。
  • デザイン(変革設計)
    • 理想の組織を実現するために実行可能な行動計画を作り上げるプロセス。新たな夢 の実現に向けて、組織メンバーの誰もがポジティブ・コアを開拓し、これを拡張す ることで組織の理想像を実現するための変革設計を行う。
  • デスティニー(変革実現)
    • システム全体の潜在変革能力を強化し、すべての組織メンバーに夢と希望を喚起す ると共に、潜在力の実現に向けた変革とパフォーマンス向上の勢いを維持すること で、変革の実現を運命(デスティニー)づける。