Project

General

Profile

経営学研究

修士論文の審査基準

仮説検証や分析モデルによる事実発見を通して既存の理論に新たな 知見を付加する

審査の観点 主な審査内容
研究テーマ設定の妥 当性 先行研究のレビューが適切になされ妥当性ある研究テーマの設定になっているか
論旨の一貫性 論理展開に一貫性・整合性があり、筋の通ったものになっているか
調査やデータ分析の適切さ 調査手法を理解して使用し、データ分析や発見の仕方が適切になされているか
独自性・新規性 先行研究に対して新たな知見を加えており、独自性が見られ るか
有用性・実践性 社会的に有用であり、実践性を有しているか
論文の完成度 文章表現、表記・引用の仕方などの形式面の他に、構成や内容面も含めて論文全体の完成度が一定レベルに達しているか

研究区分

  1. 理論的研究(theoretical research)
    行動を直接観察したり実際の証拠を収集することはなく、 他者の著作を読んだり、研究テーマに関連する他者との対 話を通して研究する

  2. 実証的研究(empirical research)
    実験や観察を通して証拠を収集することで、結論を導き、知識体系に何らかの意味のある貢献を」する

実証のためのパターン

  1. 帰納仮説生成型
    質的・量的な調査や事例分析などを通して、仮説・理論・概念・モデルを生成して いく

  2. 演繹仮説検証型
    既にある仮説・理論・概念・モデルについて、事象・事例・データへの適用を確認し ていく

  3. 帰納+演繹 仮説生成・検証型
    質的・量的な調査や事例分析などを通して、仮説・理論・概念・モデルを生成し、 さらにそれがより多くの事象・事例・データに適用しうるかを確認する

研究のプロセス

  1. 自身の問題意識を明確にし、研究課題を定める
  2. 研究課題に関する先行研究をレビューし、自身が依拠する理論的基盤を定め、分析枠組 みを作る
  3. 先行研究レビューを踏まえ、問い(リサーチ・クエスチョン:RQ)を立てる / 仮説を立てる
  4. 調査方法を定める
  5. 調査対象を定める
  6. 事例・データ(定性データ/定量データ)を収集する
  7. 事例・データ(定性データ/定量データ)を分析する
  8. RQ/仮説ごとに分析結果をまとめ、考察する
  9. 3で定めた問い(RQ)/仮説に対する答えを導く
  10. 9で得られた答えを3でレビューした先行研究と比較し、研究の理論的な意義を明らかにする
  11. 9で得られた答えが実務においてどのような意義があるかを考察し、研究の実践的な意義 を明らかにする
  12. 研究の問題点や限界、今後の課題を明らかにする

問題意識

  1. 研究テーマ
    • 自分は何を問いたいのか?
    • 自分はなぜそれを問いたいのか? (個人的な問題意識+社会背景)
  2. 研究の意味・意義
    • その研究は社会的にどのような意味・意義があるのか?
    • その研究は学問的にどのような意味・意義があるのか?
    • なぜその研究を自分が行う必要があるのか?
  3. 研究の実現可能性
    • その研究は実行できるのか?(フィジビリティがあるのか?)

先行研究をレビューする目的

  1. 自身の研究課題に関して、どのような理論があり、どのような研究がなされ、何がどこまで明らか にされているのかを知るため ⇒文献を探す範囲が狭いと先行研究が見つけられない
  2. 自身が行う研究の「問い」や「研究方法」を明確にするため
  3. 自身の研究が依拠する理論的基盤(理論的枠組み)を作るため
  4. 事例分析に向けたフレームワーク(分析枠組み)を作るため
  5. 自身が行おうとしている研究が、実社会や学術界においていかに重要なのかを示すため ⇒研究の必要性・重要性を示す
  6. 自身の研究で明らかにしたこと(問いに対する答え)が、既存研究にどう貢献したかを示すため ⇒先行研究との対比

良い問いを作るための自問自答

リサーチクエスチョンは、実践的に意味のあるものだけでなく、 理論的・学問的にも意味があるものでなければならない

  1. この問題については、先行研究でどこまでが分かっていると されているのだろうか?通説に『穴』はないのだろうか?
  2. 分かっていないのは、どのような点についてなのだろうか?
  3. この問題設定は、理論的に意義はあるものなのだろうか?
  4. これは、現場の人々にとってもリアリティのある問題なのだろ うか?

研究計画をまとめるための自問自答

  1. あなたがやろうとしている研究テーマに関して、あなたはどのような問題提起がした いのですか?
  2. それは、あなたがやろうとしている研究テーマについて、あなたがどのような姿を 「あるべき姿」「ありたい姿」としているからですか?あなたが社会前提をどのように捉え ているからですか?
  3. それは、あなたがやろうとしている研究テーマについて、あなたが現状の姿をどの ように捉えているからですか?
  4. あなたがやろうとしている研究課題(主問)は何ですか?
  5. あなたがやろうとしている研究課題についてお聞きします。なぜそれをあなたが今 やる必要があるのでしょうか?社会的に、組織的にその研究課題に取り組む理由は何で しょうか?
  6. あなたがやろうとしている研究課題は、社会的、あるいは、学問上、あるいは、組織 の問題解決において、どの程度重要なものですか?
  7. あなたはこれまでどのような先行研究を読んできましたか?
  8. あなたが読んできた先行研究はどのようなグルーピングができますか?
  9. あなたが読んできた先行研究の範囲で、まだ明らかになっていないことは何でしょう か?
  10. あなたは今のところ、どのようなRQを立てて研究を進めたいと思っていますか? RQは複数設定していただいてかまいません。
  11. 設定したRQは、これまで読んだ先行研究とどう紐づいていますか?どの先行研究 が明らかにできていない問いを明らかにしようとしているものですか?

実証研究アプローチ

  1. 仮説生成型
    「新たな理論や概念・モデル」を作りたい場合

    • 社会・組織の様々な事象・事例、定性・定量データをもとに、 していく研究アプローチ。
    • 「ある現象の背景にあるメカニズムを探りだそうという目的に向かって行われるも の」であり、「研究の結論は『このようなメカニズムが背景にあると考えられる』とい う仮説の形で提示される」(浦上・脇田,2008,p.11)
    • 独自性の高い理論や概念、モデルを生成できれば、理論的貢献度の高い研究 となる
  2. 仮説検証型
    「既存理論や概念・モデル」に基づく事例・データの解釈・考察がしたい場合

    • 既存の理論・概念・モデルで、社会・組織の様々な事象・事例、定性・定量 データを分析し、理論・概念・モデルの適用可能性を確認・検証する
    • 「ある仮説が正しいかどうか、またその仮説はどのようなものにまで適用可 能なのかを、データを収集し分析することを通して検証することを目的とす る」(浦上・脇田,2008,p.11)
    • 理論や概念・モデル自体は昔からあるものでも、取り上げた事例に新規性・ 独自性があれば、理論的な貢献につながる

リサーチクエスチョン

リサーチ・クエスチョンとは、研究によって何を明らかにしたいか を「問い」の形で示したもの(ダン・レメニイほか,2002,p.13)

  • 量的研究
    • 量的研究の場合、「仮説」=「RQ」となる
    • 仮説(RQ)は検証や棄却がされるものでなければならな い
  • 質的研究
    • ある問題について、「どうなっているか?」(記述的問い)「なぜなのか?」(説明的問い)を立てる
    • Howを描き、Whyを探る

文献検討の際の主なデータベース

データベース 概要
CiNii Articles 国立情報学術研究所の提供する論文情報DB
https://cir.nii.ac.jp/
CiNii Books 国立情報学術研究所の提供する書籍情報DB
https://ci.nii.ac.jp/books/
CiNii Dissertations 国立情報学術研究所の提供する博士論文のDB
https://ci.nii.ac.jp/d/
J-STAGE 文部科学省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナル
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/
JAIRO 国立情報学研究所学術機関リポジトリポータル
https://irdb.nii.ac.jp/
国立国会図書館サーチ https://iss.ndl.go.jp/
Google Scholar Googleを活用した論文・書籍の検索
https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja
ProQuest Dissertation Express 米国を中心とした博士/修士論文のDB
https://dissexpress.proquest.com/search.html
KAKEN 科学研究費補助金DB
https://kaken.nii.ac.jp/ja/
JILPT 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/db/index.html

文献のタイプ

  1. 理論文献
    • 「調査対象やテーマを理論的な観点から把握するための分析的な枠組みを提供 してくれるタイプの文献」
    • 仮説検証型の調査研究をする場合は、仮説(理論仮説・実証仮説)を設定していく 際に、理論文献が重要な役割を果たす
  2. 先行研究
    • 「研究を進めていく上で採用された理論的視点が比較的明確に解説されている文 献」
    • 「調査結果にもとづいて既存の理論の修正を提案したり、新たな理論的枠組みを 提案したりするような論文」
    • 「方法論や対象へのアプローチの仕方など、何らかの意味で自分の調査研究にと ってモデルとなるような論文」
  3. 先行調査
    • 「理論的分析よりも文献の中で示されているデータの内容あるいはその一次集計 の結果などに価値があると思われるもの」
  4. 一般的資料
    • 「学術的な性格を持つ文献というよりは、新聞、雑誌、各種の統計資料など一般に 広く公開されている資料」
  5. 内部記録文書
    • 「調査対象となる組織や集団あるいは特定の人物に関して、特定の場所に蓄積されてきた資料」

先行研究レビュー 文献整理フォーマット

  1. 当該文献・論文名 (論文の場合は所収された雑誌名も記述)
  2. 著者名
  3. 発表年
  4. 当該文献・論文のテーマ
  5. 当該文献・論文の問い (リサーチクエスチョン)
  6. 採用されている調査方法
  7. 当該文献・論文が明らかにしたこと (問いに対する答え)
  8. 当該文献・論文では明らかにされていないこと
  9. 当該文献・論文と自身の研究の関係性 (自身の研究テーマの位置づけの確認)
  10. 当該文献・論文とその他の研究との関係性

先行研究の書き方

  1. 付け加え型
    • 本研究に関連する研究には、A,B,C,D,Eがあり、Aでは ・・・、Bでは・・・、Cでは・・・、Dでは・・・E では・・・が明らかにされている。 しかし、本研究の目的を達成するためのの、***と いう視点からの検討はなされていない。そこで、本研 究の課題として■■を設定する。
  2. 分類⇒付け加え型
    • 本研究に関連する研究として、・・・の視点から研究され たものにA,Bがある。Aでは・・・、Bでは・・・が明らか にされている。
    • このA,Bは・・・という点は明らかにされているものの、 は明らかにされていない。こうしたの点について 検討されたものにC,D,Eがある。 Cでは・・・、Dでは・・・、Eでは・・・が明らかにされ ている。しかし、まだ◇◇という点での議論や事例の蓄積 は十分とは言えない。そこで本研究では◇◇の観点から議 論を進める
  3. 比較検討型
    • 本研究に関連する研究として、A,B,Cがあり、これまでいくつかの比較検討がな されてきた。たとえばAとB、BとCとの比較がなされてきた。しかし、AとCの比 較については、**という理由から着手されてこなかった。そこで本研究ではA とCを比較し、新たな知見を得ることを試みる。
  4. 実態解明型
    • 本研究に関連する研究としてわずかにAがあるが、その他の研究はなく、従来こ の分野について研究が行われてきたとは言い難い。 その理由としては**が考えられるが、現在社会環境の変化の中で△△の問題が 指摘される中で、〇〇についての研究を深める必要性が高まっているといえる。 そこで本研究では、◇◇の観点から対象者に対しインタビュー調査を実施し、定 性的な分析を行った。得られた結果を、概念、サブカテゴリ、カテゴリの順で整 理したところ、〇〇についていくつかの要因があることが確認された。
  5. 事例蓄積型
    • 本研究に関連する研究として、A,B,Cがあり、これまでいくつかの事例研究がな されてきた。たとえばAでは・・・の事例が、Bでは・・・の事例が、Cでは・・ ・の事例が検討され、Aでは・・・が、Bでは・・・が、Cでは・・・が明らかに されてきた。しかし、これまでの研究では、△△の事例についての検討はされて いない。そこで、本研究では△△の事例を扱い、これまでの事例研究から明らか にされてきたことに新たな知見を加えることを試みる。

質的研究の位置付け

  • 研究
    • 形而上学 - 哲学、倫理学、美学、神学など
    • 形而下学
    • 理論科学 - 数学のほとんどや理論物理学など
    • 経験科学
      • 量的研究 - 量的なデータを採取する
      • 質的研究 - 質的なデータを採取する

質的研究の定義

  • 現象の性質や特徴といった、数値で表せないデータ(質的データ)を扱う研究
  • 質的研究とは、研究者と研究参加者が相互作用をする なかで行われ、言葉などの質的データを用いて、研究参 加者にとっての経験やその意味を帰納的に探究する研 究である(グレッグ美鈴・麻原・横山編著,2016,p. 18)
  • 「質的研究は、現象に関しての先行研究の蓄積が少なく、 変数が把握されていないときに用いられる研究手法です。 あるがままの状況の中でデータを収集し、通常、データを 数におきかえることなく分析します」(戈木,2007,p.2)
  • これまでにないような新しい社会の文脈や視界が現れて いる状況の中では、これまでの研究で用いてきた演繹的 な方法では、研究対象の多様性に十分対応できなくなっ ている → 帰納的な研究の必要性

量的研究と質的研究の違い

量的研究 質的研究
目的 仮説の検証 仮説生成
正当性の根拠 客観的推論 主観的了解
主義 実証主義 解釈主義
方法 数字で分析する 言葉で分析する

量的研究と質的研究のパラダイムの違い

客観主義パラダイム 主観主義パラダイム
存在論
社会科学が研究対象とす る社会とはどのような存在 なのか
実在主義
人間の外側に存在する社会は、人 間の意識・認知からは独立して存在 するものであり、人間がそれをどう認 識するかにかかわらず客観的に存 在する
構成主義
社会で起こる現象は、人間から独立 して客観的に存在するものではない
認識論
研究対象である社会を認 識するにはどうしたらよい か、社会を研究する際の 最適な方法に関する一般的な仮定
実証主義
社会科学における研究の目的は、社 会現象に関する原因と結果に関する 因果関係を解明すること、あるいは 社会で発生する現象を正しく説明・ 予測すること
解釈主義
社会科学の研究目的は、研究対象 である社会現象の関係者たちの内 面世界を理解すること
研究アプローチ 演繹法
研究対象となる社会現象を測定でき る形に指標化し、仮説の検証や棄却 を行う。収集するデータの中心は定 量データである。
帰納法
事前に理論的仮説を設定することな く、まず研究対象となる個人や社会 グループからデータを収集する。収 集するデータの中心は定性データで ある。

実証主義と解釈主義

  • 実証主義 →認識結果における客観性
    • いくつかの概念の構成
    • 概念間の関連づけ
    • 概念を観察可能なものとする指標の設定
    • 指標の観察/測定による検証

インタビューで語られた内容は事実なのか?嘘をついて いる可能性はないのか?といった批判を避けるため、イ ンタビューで語られた内容を裏付けるための調査(観察、 関連資料の収集、第三者への聞き取りなど)を行う方略 をとる

  • 解釈主義 →認識手続きにおける客観性
    • 現実を意味の解釈過程として捉える
    • 行為者の主観を重視

インタビューから事実を捉えようとしない。語り手が、ある出来事や状況をどのように意味づけているのかを捉えようとする。人が何をどのように語ったのかに注目する。語れない、語らないことがあれば、それも考察の対象とする

インタビューの依頼状

  • インタビュアーの身分、所属機関、連絡先(緊急連絡先を含 む)など
  • 調査全体の意図、仮説の概要(既に何か調査に関連する論 文などの資料があれば、それを添付する)
  • なぜ、相手を聞き取りの対象として選ばせてもらったかという 点についての簡単な説明
  • 質問内容の概要、特に質問したいことのポイント
  • 公表する際の発表形態
  • 誰がインタビューするか(複数でインタビューする時には、そ の理由と他のインタビューアーの氏名および身分)
  • インタビューのおおよその所要時間

調査対象の選定(非確率抽出法)

  • 便宜的抽出法
    • 集めやすい人、頼みやすい人たちに研究参加者になってもらうもの
    • 自分の関わっている集団の人にお願いする
  • 継続的抽出法
    • サンプリングと分析を繰り返すもの
    • グラウンデッド・セオリーの理論的サンプリング
  • 層別抽出法
    • 個々のサンプルの間の違いが大きくなるように層別に選ぶ
  • 自己選択サンプリング
    • 研究参加者が自発的に研究者にアプローチするパターン
  • スノウボール・サンプリング(機緑法)
    • 研究参加者が次の研究参加者を研究者に紹介する

インタビュイーの選択(個人調査の場合)

  1. フォローアップ・インタビューが可能であること
  2. 言語化の能力が高いこと
    • アクティブなインタビューでは、インタビュイーもまた、当事者としてのコーディングを行っているという指摘もある
    • 聴き取りたい内容が、思考や感情に関するもの、行おうとしている研究が解釈主義的なものの場合、特にインタビュイーの言語化能力は重要
  3. 語りたいことがあり、あなたをその語りたい相手と認識してくれる人であること
    • インタビュイーにとって、その研究者が、自身の有する経験や体験を深く聴き取る人であると思えるかどうか
    • 聴き取った内容を研究に生かし、同様な背景を持つ人たちや同様な経験をする人たちのために貢献してくれる人であると思えるかどうか

インタビュー調査でやることリスト

  • 調査前
    • 問題意識・研究目的・研究課題の明確化
    • 予備調査の実施
    • 「〇〇に関する調査についてのご協力のお願い」(調査依頼)
    • インタビューガイドの作成(質問内容の吟味・精査)
  • 調査中
    • 自己紹介
    • 調査協力への謝意を表明
    • 趣旨説明(研究テーマ、目的、プライバシーの保護、録音の許可)
    • インタビュー調査の開始
    • メモの併用
    • 聞き取りの最後に、性別、年齢、職業などの個人情報(フェイスシート)について聞く
    • インタビュー調査の終了
    • 改めて謝意を表明
    • 不明点などが出た場合には、改めて協力をお願いしたい旨を伝える
    • 次の対象者を1~2名紹介してもらう(「ほかにこのテーマに詳しい方はいらっしゃいますか?」)
    • 挨拶と御礼
  • 調査後
    • 後日、対象者に礼状を書く
    • 逐語録の作成(テープ起こし)
    • インタビュー・ノートに気づいた点を書く
    • 理論的分析メモの作成
    • 各研究テーマ・課題の解明のために、実証結果を整理する
    • 論文・発表レジュメに倫理的配慮について記載する

インタビュー調査の限界への対処

  • 実証主義的な立場に立つならば・・・
    • 複数のソースからインタビューで語られた内容に対する裏づけをとる(トライアンギュレーション/三角測量)
    • できるだけ多くの人にインタビューし、得意な語りを除外し、大人数の人に共通する内容を「事実」とみなす
  • 解釈主義的な立場に立つならば・・・
    • そもそもインタビューから「事実」を引き出そうとはしない
    • その人が出来事や状況をどのように意味づけているのかを捉 えようとする
    • もしインタビュイーが実際の経験とは異なる内容を語ったとし たらなぜそのような語りをしたのかを理解しようとする
    • 「事実」ではなく、人の意味づけ、ものの見方、何をどのように語ったのかに着目する

質的研究におけるリサーチクエスチョン

  • 記述的な問い(How)
    • 物事や出来事が「どのようなものであるか」「どうなっているか」 に関する問い
    • 物事や出来事の状態や実態をできるだけ正確に描き出して 報告する
  • 説明的な問い(Why)
    • 物事や出来事が「なぜそうなっているのか」「なぜなのか」に関する問い
    • 物事や出来事についての何らかの説明や分析を提供する

事例研究

  • 医学、看護学、社会学、そして経営学などの学問領域で多く用いられ、 現代の事例を使って理論(仮説)を実証、修正、または構築するための研 究戦略の一つ(横澤,2019)
  • 特定のケースを取りあげ、詳しく調査・研究し、問題の所在・原因等を発 見・究明しようとする方法で、帰納的アプローチのひとつ(関根,2021)
  • 研究テーマに関して、1つあるいは複数の研究対象に対する集中的なデータ収集によって他のどんな研究方法よりも研究対象に関して詳細に、そして全体像をつかむことのできる方法(須田,2019)
  • 事例研究は、「どのように」「なぜ」という問いおよび探索的に「何が」を問う 研究に適している(野村,2017)
    • したがって、事例研究には定性的な調査に基づく研究が多い

優れた事例研究の特徴は、研究対象とする事例に対して読 者がそれまで抱いていたイメージを覆し、それまで誰も考え たこともないような新しい答えを提示することにある(前田, 2013)

  • 価値ある事例研究(琴坂,2014)
    • 既存の理論で説明しきれない要素を持つ事例を取り扱う • 既存の理論をより精緻化、具体化できる事例を取り扱う
    • 既存の理論の有効性を検証できる事例を取り扱う